木村荘八の生家が、明治の浮世絵(開化絵)に

なんと、木村荘八の生家が、明治の浮世絵(開化絵)「両国橋及浅草橋眞圖」(井上安治:画)に描かれている。その開化絵を縮小復刻した木版画木村荘八「両国浅草橋眞図」(『柳橋界隈』互笑会編、東峰書店、昭和28年6月)の巻頭に挿入されて次のような説明があった。
 「この本の巻頭口絵は探景井上安治筆の浅草橋眞図であるが、原版から三宅陽蔵君がこの本のために縮写木刻したもの……。――丁度此の画にはこの本に扱われている「柳橋界隈」が、浅草橋、柳橋両橋を隔てて、北は上.下平右衛門の川岸から、南は元柳町の川岸、それから川の南側は吉川町から両国広小路まで、又川の北側は屋根々々を茅町、瓦町、須賀町の方まで見せ、はるか書画の奥の隅田川(大川)の向こうは、画の最右端にぽつんと牛肉店港屋の三階建から、両国橋のつき当たりに回向院の大屋根を覗かせて、本所の川岸つぷちは段々に左(北方)へと、元町、横綱、石原町...となっている。
...図の右の部分の突き当たりに、二階ガラスを五色の市松にした稍大形の家が一軒かゝれている。これが、小生の生家、第八支店いろは牛肉店だったことである」。
 この江戸の名残を僅かに残した近代都市東京という華やかな場所で育ったことが、荘八の消えゆく江戸を愛惜する生涯に大きな影響を与えていたことは間違いない。

「両国橋及浅草橋眞圖」(井上安治:画)