「古いお友だちのアルファベット 長靴を履いた猫」格安購入

神保町・小宮山書店の入り口でウォルター・クレイン「古いお友だちのアルファベット 長靴を履いた猫」(復刻世界の絵本オズボーン・コレクション、ほるぷ出版、1982年)格安2冊セットを見付け購入。
 この本は「マザー・グースの歌」の出だしの文字をABC順に並べたアルファベット絵本。金の輪の中に書かれたアルファベット文字が、それぞれのわらべ唄を描写した挿絵の中に判じ絵のように盛り込まれ楽しく美しく構成された絵本だ。



 1000以上あるといわれる「マザー・グースの歌」の中で私が知っている僅か十数曲がこの中にあるはずはないが、それでも「もしや」と思い頁を追ったが「ハンプティ・ダンプティ」も「ロンドン橋落ちた」も見つからなかった。
 装飾美術に力を注いでいたクレインは、1864年から1876年にかけて、自分の色彩・図案の理論を実験し楽しむため、印刷技師エドマンド・エヴァンズと組んで、3色刷りのトイ・ブックスを日本の浮世絵の技法を取り入れて制作、商業美術の世界に新風をもたらした。


セットになっていたもう1冊は、ウォルター・クレイン画『長ぐつをはいた猫』(「Puss in Boots」1873年、復刻世界の絵本オズボーン・コレクション)。『長ぐつをはいた猫』は、日本でも翻訳出版されており、私も片山健:装画、 シャルル・ぺロー『長靴をはいた猫』(澁澤龍彦訳、大和書房、1988年)を持っているが、クレイン版も見たかった。


 クレインは、ジョージ・ラウトリッジ&サンズ社から1873年に出版された「長ぐつをはいた猫」を「改訂して、もっとサイズを大きくし、デザインをしなおし、新しいカヴァーをつければ、新しい装いのトーイ・ブックは人々の興味をひくかもしれない」と考え、ラウトリッジ社から買取ってあった版木で、ジョン・レイン社から、トーイ・ブックスを再版。今回購入したのは、ジョン・レイン社版の復刻。(この本に登場する粉屋の息子はクレインの若い頃の自画像だという。)


 貧しい粉屋が死んだとき、息子に残されたのはネコ1匹だけ。ところがこのネコが……。というペローの昔話をはっきりした黒の輪郭、濃淡をつけずフラット塗られた色、強い墨色などで繊細な線と美しい色彩で見事な絵本につくりあげている。