時代を写す装丁

2007年6月、太宰治人間失格』(集英社文庫、2008年)のジャケット(カバー)を、『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』などで知られる漫画家・小畑健氏が描いたイラストに掛け替え新装改訂版を出したとたん、わずか1ヶ月半で古典的な名作としては異例の7万5千部を売り上げる大ヒット作品に変身したのはまだ記憶に新しい。

小畑健・画、太宰治人間失格』(集英社文庫、2008年)


 福田隆義・装画/藤子不二雄『ノスタル爺』(小学館、昭和53年)は、『人間失格』とは反対に、中身は漫画だが、表紙は福田隆義の細密な絵が用いられている。私が子供の頃は漫画を読むと馬鹿になるとまことしやかに語られたが、『ノスタル爺』にもそんな漫画有害論への配慮があったのだろうか? 福田の仕掛ける見事なメタモルフォーゼに、世の親達はごそってだまされたに違いない。



福田隆義・装画/藤子不二雄『ノスタル爺』(小学館、昭和53年)