1872年に学制が公布され、『西国立志編』は教科書としても使用された。「人は志しを立てて努力するならばきっと成功する」ということが繰り返し説かれており、自助論の序文にそえられた「天は自ら助くる者を助く」、創造主である神は自分の奮闘努力によって助かろうとする者を助ける、という一文は有名である。


こんな本を買って喜んでいる気持を分かる人は、殆どいないんだろうな、なんて思いながらも、誰かに聞いてもらいたくて仕方がない。この1冊のわくわく感動は1週刊は醒めない。



中邨正直『西国立志編(原名自助論)』(駿河静岡 木平謙一郎蔵版、明治4年?)



中邨正直『西国立志編(原名自助論)』(駿河静岡 木平謙一郎蔵版、明治4年?)目録(目次)



中邨正直『西国立志編(原名自助論)』(駿河静岡 木平謙一郎蔵版、明治4年?)本文
そんなに読まれた本なら何とか読んでみたくなったが、和とじの本というだけで、読めないだろうな、と思ってしまう。が、じっくりと眺めていると意外に分かりやすい。百遍読めば意自ずから通ずである。おなじページが活字になっているとさらに読めそうな気になってくるので、後に発行された活字で印刷された本を開いて試してみよう。



中村正直訳述『改正西国立志編(原名自助論)』(博文館蔵版、大正4年)本文


活版印刷のこの本だと「藝を好むものは、利の爲に非ず」と、旧漢字が使われているが、何とか読める。
「人の卓絶(*すぐれて他にくらべるものがないこと)の名を成すは、偶然天幸(*自然に与えられた幸い、天の恵み)に非ずして、専一(*もっぱらそれに打ち込んで他をかえりみない)勉強なるに由るなり、……」と、今日でも充分に通じる内容で「才は天から受けるけれども、これを成全するは、自修の功によることなので、天才に恃(たの)まず、人力を尽くすべき」ということか 。