日本の分子生物学の発展に大きな足跡を残した渡辺格の追悼文集「渡辺格追悼文集」(ディー・エヌ・エー研究所、2009年8月、非売品)が大型サイズのA4版176Pで刊行された。約180点に及ぶ写真や、利根川進氏、荒川修氏、鎮目恭夫氏などなどたくさんの科学者や友人達による研究の検証や交友録で構成され、見ごたえ読みごたえ十分な冊子として完成した。執筆者たちの顔ぶれからも、渡辺格氏の偉大さがどれほどのものかを推し量ることができる。


ご存知の方も多いと思うが、渡辺格は、1953年にWatosonとCrickによりDNA二重らせん構造モデルが提出され分子生物学という言葉が定義されるまえに、「生命現象の研究と科学の役割」という論文を岩波書店の「科学」22巻496~500(1952年)に発表、分子生物学が誕生する直前に書いており、以後世界の最先端分子生物学界を走ってきたパイオニアだ。また、ノーベル医学・生理学賞を受賞した利根川進氏をはじめ多くの研究者を育て、日本の分子生物学を牽引してきた偉大な分子生物学者だ。


発行部数数百部のこの本を入手するのは難しそうですが、未確認情報ではあるが10月に開催される講演会で、ディー・エヌ・エー研究所への支援金一口5000円(未定?)を寄付してくれた人にだけ無料配布するらしい、という噂を耳にしました。



渡辺格追悼文集」(ディー・エヌ・エー研究所、2009年8月、非売品)A4版176P

渡邊格の日本経済新聞連載「私の履歴書」1〜30(1997年)を完全復刻掲載。1歳の時から90歳で他界するまでを多くの写真と、仲間たちの追悼文で綴っている。
この本では、私も編集、レイアウト、装丁などのお手伝いをさせてもらった。いずれ語り継がれるであろうこんな歴史的な話は、どこか遠くの世界のような話しだと思っていたが、今回かかわることができて、何だか歴史の一端にホンの指先だけだが、触れることができたような気がした。