この頃から、どんどん細かい部分を彫る事に興味が動いてしまい、そのうちに面倒になり、約60点を半年くらいで創り「化粧」あたりで、版画制作を止めてしまいました。嵐のようにのめり込んでいましたが、いまでは版画のことなどすっかり忘れていました。
安野さんも、まるではしかにでもかかったかのように、切り絵にのめり込んでいました。が、
森本哲郎『ことばへの旅』(ダイヤモンド社、昭和50年)
『がまの油 贋作麟寸屋少娘』(岩崎書店、昭和51年)
『きりがみ江戸いろは』(新泉社、昭和53年)
『きりがみいろはかるた』(講談社、昭和54年)
『きりがみ昔咄』(岩崎美術社、昭和55年)
などの名作をたくさん残し、『安野光雅きりえ百首』(NHK出版、平成9年)などの例外もあるが、昭和50年代で、この技法からスッカリ足を洗ってしまった。
きりがみという制約の多い技法の中で、いい作品をつくっていくのは困難な作業だ。色彩のない世界で、大胆な構図やコントラストで、インパクトのある印象の強い絵を残してくれたが、また、新たな作品を世に送り出して欲しいと願う。