もちろん添い寝本

事務所に1冊、書斎に1冊、リビングに1冊と行く先々で眺められるようにしている。架蔵書の美本ランキングではもちろん最高位の添い寝本である。ちなみに美本ランキングとは、「胸きゅん本」「頬すり本」「添い寝本」の三段階でである。谷崎にとってももちろん「単に内容のみならず形式と体裁、たとへば裝釘、本文の紙質、活字の組み方など、すべてが渾然と融合して一つの作品を成す」というように、装丁は、執筆活動の延長なのである。
 
私も著者だから許される贅沢と遊び心があり、内容をうまく形に表現している優れた装丁だと思っている。新聞広告にも「本文の装幀を創案するために殆ど創作と同じ苦心を払い、ようやく此の独創の価値を語ると同じように装丁にも賞讃の言葉を浴びせたい、と思うのだが、文学作品としての讃美とは裏腹に、現実は装丁に対する厳しい非難の雨あられ状態だ。