版画に対する批判的なメッセージ

 
 恩地達が版画に興味を持ち始めた頃に、大阪朝日の日曜付録に版画号を特集し、そこには、齋藤与里が「木版画の価値は趣味一点張りだ。其れ以外に何もない。──趣味性は誰の心にもある。従って安価なものである。──自画自刻をやる人は──自分の絵に自身がない結果である。」と、版画に対して批判的な意見を掲載していた。

 木村荘八も「──僕は木版画といふ物に興味を持ってゐない。──一種の手間仕事だ。活気ある人間のやる仕事ではない。木版や草画等に無気になってゐられる人間は、それでもふやくざな人間だ。芸術の問題ではない。やる人間の問題になって来る。」と全面的否定である。
芸術家たちは、版画を認めていなかったようだ。恩地達にとっては逆風である。