桃を拾う場面では「おばあさんは こちらへこい こちらへこい としたじゃないの ももはしょくぶつだから きこえないよ」と、ストーリーに批判的だ。第三番目の人が雲の上から、語り部が語る桃太郎の噺を聞きながら批判を加えているような構成が面白い。metalanguageってこんなのも指すのかな?
安野光雅『きりがみ昔咄─桃太郎・舌切雀・花咲爺─』(岩崎美術社、1980年)
「ももたろうは せいちょうしたあるひのこと おばあさん きびだんご つくってください おじいさん せいしん きめました ももたろうは おにがしまへと でかけたじゃないの」と、ほぼ3〜4行で、きびだんごを作ってもらい、鬼ヶ島へと出かける場面まで話しが進んでしまう。もちろん、鬼退治の動機は語られていない。
ももたろうって、鬼を思いやるいい奴なんだ。船の上で、犬猿雉に訓示を垂れている。「ももたろうは ふねにのって ただいまよりくんじをする としたじゃないの ろうじんのおにをせめるな ふじんのおにをせめるな こどものおにをせめるな びょうきのおにをせめるな」と。そこまでいうなら、鬼退治しなければいいじゃないの。
安野光雅『きりがみ昔咄─桃太郎・舌切雀・花咲爺─』(岩崎美術社、1980年)