2012-04-21から1日間の記事一覧

『明治大帝』という840ページもある大部の本が「キング」(昭和2年11月号)の付録にある。この本には100点程の挿絵が挿入されており、ほとんどがそれぞれ別々の挿絵画家によって描かれている。サインの収集が一挙に増えるがスキャンは大変だ。最初に登場したのは小室翠雲:画「二重橋」。高名な日本画家なのだろうが挿絵としては微妙?

アルファベット、イニシャル、漢字、平仮名、落款風などたくさんのサインの種類を使い分ける画家はまだ普通だが、アルファベットのサインでこんなにもイメージの異なるサインを使う画家は珍しい内藤賛のサイン。点になっている右のサインは、小さくて線が細く薄いのでアミ点になってしまったで、このように書いたのではない。

モダンな挿絵画家として紹介した佐野繁次郎だが、髷物(時代小説)の挿絵を「文学時代」(昭和6年)に見つけた。さすがにこの時のサインはあの「S.sano」ではなく、繁次郎のモダンなイメージからはほど遠い筆文字のごっつい漢字のサインだった。

「赤い鳥」の表紙絵といえば全196冊のうち163冊を描いた兎のサインの清水良雄を思い起こすが、残り33冊のうち12枚は深澤省三(1899-1992年)によって描かれた。画像は深澤省三:画「赤い鳥」(昭和10年)廃刊になる1年程前に刊行されたもので、清水の描く写実風の絵とは違って省略され洗練された形とシンプルな色彩とで省三独自の画風を醸し出しているように、サインも単純明快だ。