あふれる才能に例えられる百日紅

百日紅さるすべり)】
 「散れば咲き散れば咲きして百日紅」(加賀千代女)。「咲きながら、花をおびただしく散らしてゆくのに、見上げれば、またどれほども量を減らしていない満開の花が頭上にある。」(夢枕漠)。こんな風にして毎日がお祭りのように100日間も咲きつずける。枯れることのない豊かな才能にも例えられる百日紅

百日紅さるすべり


杉浦日向子百日紅』(ちくま文庫、2014年)


 杉浦日向子百日紅』(ちくま文庫、2014年)では、葛飾北斎の娘・葛飾 応為(かつしか おうい、生没年未詳)のことを指している。

 応為の作品は10点ほどしか確認されていないせいか、あまり知られていないが、江戸末期に、強く誇張した明暗法と細密描写に優れ、陰影や遠近法を用いた作品を残しているのは、フェルメールレンブラントが『光の画家』といわれているように、もっと評価されても良いのではないかと思う。
 応為こそは百日紅に例えられるにふさわしい才能あふれる女性といえよう。

葛飾応為『吉原格子先之図』



葛飾応為『夜桜美人図』



葛飾応為『三曲合奏図』
 吉原の遊女を描いているが、着物の模様の蜘蛛の巣は囚われの身を、露は儚い身の上を表わしているとの解釈もあり、一見楽しそうな絵も実は、社会風刺のようである。