大正末期の装飾文字を使った本2点


大正16年1月刊行の「週刊朝日」だ。実際には大正16年はなかったが、新年号は12月末には配本されてしまうので昭和元年12月には訂正が間に合わなかったのだろう。私は平成元年になっても使われていた昭和65年の10円銅貨や定期券を持っているが、これも訂正が間に合わなかった例だ。

今回掲載した「週刊朝日」のロゴはいつごろ作られいつごろまで使われたのか、あまり目にしたことがない。こんなモダ〜ンなロゴなのに、どうしてあまり使わなかったのか。流行を取り入れたりするのはあまりにもミーハー的で、天下の朝日のイメージとあわなかったのだろうか。




週刊朝日」大正16年1月号には巻頭小説土師清二「破れ傘」(挿絵=小田富弥)、長谷川伸「御免人力車」(挿絵=大橋月咬)、吉川英治「蜘蛛売紅太郎」(挿絵=河野通勢)など時代小説とその挿絵が目立つ中、武井武雄のこの1ページの記事は英語が入っていたりしてバタ臭く強烈な異彩を放っている。



モダンガールを「むだん・かえる」などとの風刺も利いて内容も痛烈だ。
モダンガールは武井にとっては「性遊技を好む」「街燈ほの暗きあたりにて姿を消して━━あたし『むだん・かえる』のよ。」などとぬかす不道徳な女性と写っていたようだ。


英字からヒントを得た装飾図案文字が斬新なイメージならば英語その物での表現はモダンを超越しているのではないか。表紙も巻頭小説も江戸時代を引きずっている中での武井の作品がどのように受け止められていたのかを正しく把握するのは難しいが、まだまだ時代小説などが根強い人気を保っているらしい時代の風のなかでの奮闘ぶりを感じ虜とができるのではないだろうか。