『新しき図案文字入門』

東京洋画研究会編『新しき図案文字入門』(大東書院、昭和10年再販、初版9年1月)。表紙の挿絵はいったいなんの本だろうかと思わせるような、理解に苦しむ絵が配されている。


タイトルでは「図案文字」と表現しているが、序文では「意匠文字」とも言っている。



巻頭では「圖案文字と云うのは模様的に形付けられた文字のことである。」と述べている。


さらに「これから私達の文字に對する必然的欲望はその装飾化意匠化であるという事を忘れてはいけない。印刷物又は廣告畫に於ても装飾文字の助けを借りなければならない事は勿論の事である。外國に比して日本の漢字及假名の装飾圖案化の研究は、未だその第一歩を踏み出した程度のものであるから、其字體圖案化の研究は実に今日の急務である。故に諸君は彼の羅馬字に見る如き美しい装飾化を日本文字に於ても見られる様に研究努力して欲しい。」


と、装飾文字の必要性とその研究の意義を朗々と述べている。ここではまた新たに「装飾文字」という言葉が登場している。
「図案文字」「意匠文字」「装飾文字」はいずれも同じ内容を示しているものと思われるが、一冊の本なのに一つのことを表現する言葉がばらばらで、昭和10年ころにはまだ言葉が定着していなかった事がわかる。





バランスもいいし、雰囲気も出しているし、オリジナリティにあふれていて新鮮だし、時代感がよく現れている。新しいジャンルというわりには、完成度が高いですよね。
どこかに単行本の装丁とか映画の題字とか、実際使われた文字を見つけることができたら、話は盛り上がるんだが、なかなかそうは問屋が卸してはくれそうにない。