この全集には18点の挿絵(うち8点がカラー)が、あらたに描き直されて掲載されている。
中一弥:画、野村胡堂「銭形平次捕物控」(「オール読物」連載、昭和16年〜)30歳
30歳の時の絵と、四半世紀をすぎた56歳の時の同じタイトルの絵を見比べてみると、線が軟らかくなってきているのが分る。
参考の為に、まだ師匠・小田富弥の影響が色濃く残る「江戸城心中」の挿絵も見比べてください。ついでに小田富弥の絵も見比べてください。
師匠・小田富弥:画、大佛次郎「照る日曇る日」(「大阪朝日新聞」、大正15〜昭和2年)
中一弥:画、吉川英治『江戸城心中』(「河北新報」昭和5年)19歳
師匠の影響を乗り越え、独自のスタイルを確立し円熟味もましてきた50歳代の絵もいい絵が多い。中一弥の最盛期は40歳代だけではなく50歳代も含めるに変更か?
中一弥:画、野村胡堂「銭形平次捕物控」(『国民の文学 第6巻』全26巻、昭和43年)56歳
中一弥:画、野村胡堂「銭形平次捕物控」(『国民の文学 第6巻』全26巻、昭和43年)
中一弥:画、野村胡堂「銭形平次捕物控」(『国民の文学 第6巻』全26巻、昭和43年)
中氏の挿絵には、庭や建物などの背景がしっかりと描かれているのが特徴の一つでもある。しかし、私は若い女性が登場すると絵が生き生きしているのを見逃さない。若いころから美人を見つけるとスケッチをしてきた、というだけあって、美人画は特別の魅力を感じさせる力がある。
中一弥:画、野村胡堂「銭形平次捕物控」(『国民の文学 第6巻』全26巻、昭和43年)