2009-12-09から1日間の記事一覧

表紙と背の資材の選択が美しいので、参考資料にと購入していた川端康成・川端香男里編纂『定本北条民雄全集下巻』(東京創元社、昭和55年12月20日)だが、これが青山二郎の装丁だとは気がつかなかった。小林秀雄が「並べるときたなくていかん」(『別冊太陽 青山二郎の眼』平凡社、1994年)といった青山の装丁とは、あまりにも異なる印象で、表紙の平には文字も挿絵もなく、すっきりとさわやかで清潔感溢れる見事な装丁に仕上がっている。

数日前に創元社東京支店の最初の一冊として『いのちの初夜』を紹介したが、青山二郎が装丁する創元社本の最初の本でもあった。因果なもので『定本北条民雄全集』上下巻は、恐らく青山二郎(1901年6月1日-1979〈昭和54〉年3月27日)の最後の装丁本ではないだ…

直木三十五『南国太平記』前編(誠文堂、昭和6年)には、装丁家名の記載はないが、青山二郎の初めての装丁本であるという、えびなのり氏の主張に耳を傾けて見よう。

「直木三十五の長篇『南国太平記』の前篇が出たのは、昭和六年(1931)年の四月で、四六判箱入の上製本。装幀者の記載はなく、中篇の中扉の対向にようやく〈装幀・挿絵 岩田専太郎〉と印刷される。扉の意匠は専太郎でいいにしても、表紙の図柄や線は専太郎の…