岸田劉生の師、清宮彬

shinju-oonuki2005-11-15

 
清宮彬(せいみや ひとし)の装丁を集めているが、今までに20冊ほど集めただろうか。それ以上なかなか蒐集が進まなかったが、先週久しぶりに清宮彬装丁、中村亮平『聖者の生活 荒野之光』を購入することが出来た。表紙の布が虫に食われているなど、保存状態は良くないが、800円なのだから納得して購入した。
 
清宮彬といっても、ご存知ない人が多いものと思うが、岸田劉生に装丁の手解きをした人物である。そのため、岸田が装丁した初期の作品などで、署名がない場合は、どちらが装丁したのかが判断しにくい書物がある。ちなみに清宮彬は、版画家・清宮質文のご尊父でもある。
 
麗子像によく似た絵を清宮も描いていて、麗子像のヒントは清宮が描いた少女像かも知れない、というのは私の勝手な推論であり、何の根拠もない話だ。岸田の書くタイトル文字は柔軟性に富んで奔放であるが、清宮の格文字はしっかりと整った形をしていて、じっと観察するとその違いも見えてくる。岸田の装丁に関しても同じように自由で気ままな感じである事が特徴であるが、清宮の装丁はやや堅く定型的な感じがする。その意味では岸田は師匠である清宮の装丁を越えているものと思える。
 
今回掲載した清宮の装丁も、左右対称であり、実直で勤勉な性格が窺われる。このきまじめさが美術家としてはややマイナスにはたらいて、岸田ほどに大きく幅田家ら飼ったのではないだろうかと推察する。
 
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