中一弥:画、乙川優三郎「麗しき花実」最終回(朝日新聞、2009年)が、9月9日に201回で最終回を迎えた。中一弥の最終回の挿絵に登場する人物が、右側を向いているのか、左側を向いているのかに興味がありましたが、右向きでした。これは、話が進展せず過去に戻るとか、なにか前向きではないストーリーを予感させる。



中一弥:画、乙川優三郎「麗しき花実」最終回(朝日新聞、2009年)

内容的には、積極的な選択にも思えるが、女の幸福を捨てて松江に帰るというのが挿絵画家・中一弥には、右向きの顏を選択させたのではないだろうか。


挿絵画家のタッチのことや、登場する女性が美しいかどうかということなどの外に、この着物の柄は、冬の花サザンカを手にしているので、重複を避けてなおかつ季節感を強調しようとして梅の花を選んだのだろう、とか、挿絵画家がストーリーをどう解釈し表現しようとているのか、などということを推察するのも、挿絵付きの新聞小説のもう一つの楽しみ方ではないだろうか。


1日前の200回の挿絵をみてみると、着物の裾のほうにはアヤメかカキツバタのような絵が描かれているが、これは、最終回の201回の絵と同じ日の、同じ場所の設定だと思うが、前身ごろの襟には梅が、背中や裾にはアヤメが描かれているのだろうか。ちょっと意地悪な観察かも。



中一弥:画、乙川優三郎「麗しき花実」200回(朝日新聞、2009年)


新聞小説の場合は、翌日の原稿が挿絵画家の手もとにあるわけではなく、まさか、翌日に、着物のアップを描くことになるだろうことなど予想だにつかないことなのですね。