知らなかった装丁家・伊藤熹朔


6月発行予定の「図書設計」72号の編集に取り掛かり、巻頭特集は町田市立国際版画美術館の学芸員・滝沢恭司さんに執筆してもらうことになった。依頼の了承を確認するための電話で、「伊藤熹朔の装丁について書こうとおもっています。」とのことでしたが、私は不勉強で舞台美術家としては名前を聞いたことはあるが、伊藤熹朔の装丁は全く見たことがなかった。


週末に神保町古書会館で開催されていた書窓展で伊藤熹朔装丁、藤森成吉『風雨帖』(改造社昭和14年)を見つけ購入した。手摺木版と思われる瀟洒な装丁で、手紙で依頼したときのテーマである「前衛美術と装丁」あるいは「アールデコと装丁」にふさわしい人選でることを納得させられた。



白色の雨糸にもグラデーションがかかっていて、画面の隅々まで繊細な心配りがされていることが分り、この小さな画面でアルにもかかわらず見るものに緊張を強いる力強い見事な装丁だ。特集原稿があがってくるのが楽しみになってきた。