青木茂『書痴、戦時下の美術書を読む』を読む

最近、ちょっとした文章を雑誌などに書く機会が増え、その謝礼として図書カードが送られてくることが多くなった。このカードのお蔭で、気兼ねなく新刊本を買う事が出来るようになったのが嬉しい。

今読んでいるのは青木茂『書痴、戦時下の美術書を読む』(平凡社、2006年8月、2600円+税)。この中に、下に掲載した挿絵のサイン解読が出来ないから「読者に作家を教えてほしい」という一文があり、近代挿絵家のサイン解読を得意とする私の出番かなと意気込んだ。


左の挿絵は、見てすぐに分った。おそらく青木氏も「『女学雑誌』などの寄稿者である。」といっているので、うすうす気がついているようだが、これは山村耕花で間違いないだろう。

山村耕花のモノグラムのデーターは拙文「挿絵家たちのモノグラム」(「紙魚の手帳」22-31号、2003.10)に連載したものを引用。
かつてこの「挿絵家たちのモノグラムの解読集」の企画を出版社に持ち込んだのだが「こんなの誰が喜ぶのかわからない」と冷たく一蹴されてしまった。挿絵と共に掲載すれば「近代挿絵家一覧とその挿絵集」としてもかなり面白いと思うのだが、どこかのこの面白さが分るセンスのある編集者がいないかな?

話を元に戻そう。右側の「KH」と読めるサインは私も解読できませんでした。候補としては早川桂太朗、梶田半古、幡恒春など数名あげることができるが、早川の場合は「K.Hyakawa」のように書く事が多く、イニシャルだけのは見た事がない。梶田半古は「半古」と、幡恒春は「恒春」と日本語で書くなど、今のところは分らない。小林秀恒も候補だが、英字のサインを見た事ないし、こんなタッチの絵は描いていないように思える。