【101冊の挿絵のある本(7)……清水良雄:装幀・挿絵、鈴木三重吉編『馬鹿の小猿』(春陽堂、大正7年)の挿絵21点を紹介します。
新聞や雑誌に連載小説が発表される時、多くの場合には挿絵が付いていますが、単行本や全集にまとめ発行される段になると、挿絵が省かれてしまうことが多い。しかし、石井鶴三:挿絵『国定忠治』の子母沢寛や、小田富弥:挿絵『新版・大岡政談』の林不忘など多くの作家が、挿絵によってイメージがはっきりしたとか、広がったと証言していように、挿絵は連載小説の一部であるといってもいいのです。つまり、連載小説は文芸と美術のコラボレーションによって作り上げられた作品なのです。文字だけしか再録しない単行本は不完全としか言いようがありません。そんな中、すベてではなくとも挿絵とともに再録されている本こそは、真の連載小説の再録と言えると思いますので、ここでは、主に連載小説が挿絵付きで単行本になった本を紹介する意味で、挿絵を紹介していこうと思っています。
清水良雄(しみずよしお、1891年8月4日 - 1954年1月29日)
明治24年8月4日、東京都文京区生まれ。東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科卒業。文展で大正6年「西片町の家」,7年「二人の肖像」,帝展で8年「梨花」と連続特選。大正の初め頃から挿絵を描く。鈴木三重吉が1918年(大正7年)7月に創刊した童話雑誌『赤い鳥』の挿絵を創刊号から手掛けた。特に表紙の絵は全196冊のうち163冊を描いた。児童雑誌『コドモノクニ』にも多くの作品を残している。昭和2年武井武雄らと日本童画家協会を結成した。