今も使われているキネマ文字

キネマ文字の「キネマ」とは映画、活動写真、シネマ等の意味でKINEMATOGRAPHの略語だ。
古書市や骨董市等では決まって、キネマ文字(装飾図案文字)が使われる。雑誌の特集等でもこのスタイルの文字はおおモテだ。そう、この文字を使えばだれもが懐かしがってくれて、古いものを扱っているんだなって理解してくれるからだ。写真は「AMUSE](毎日新聞社、2000年)



巨椋修『新版丹下左膳』(福昌堂、1997年)もキネマ文字をレトロを象徴する記号として、装丁家・勝木雄二氏がこの本のタイトルのために書いたもので、決して昔からこの文字が使われていたわけではない。デザイナーの錯覚を利用した大衆操作のテクニックだ。この新しい文字によって私達は何となく古い時代へと想像を操作させられてしまうのだ。



なんの不思議もなくこのキネマ文字が昭和初期へとタイムスリップさせてくれるが、昔の丹下左膳の単行本はこのようなタイトルは使われていなかった。写真は上から
林不忘丹下左膳』第1巻(寶雲舎、昭和24年)、装丁=志村立美
林不忘丹下左膳』第2巻(寶雲舎、昭和23年)、装丁=志村立美
林不忘丹下左膳』第3巻(寶雲舎、昭和23年)、装丁=志村立美





ところが、映画はどうだろうかということになると、さすがにキネマ文字を使っている。写真は丹下左膳が主人公の『大岡政談』(『新版丹下左膳』より転載)の映画ポスターだ。



勝木氏が書いたキネマ文字とは少し違うが、やっぱり映画のポスターにはキネマ文字が使われていた。『新版大岡政談』は昭和2年東京日日新聞に連載された。このポスターは翌昭和3年に日活によって、大河内傳次郎主演で映画化されたときのもの。


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